2014・2013年度 サイエンスフロンティアクラス 








              2014年 5月18日(日)

    理数の魅力にふれ合うための体験型ミュージアム 「リスーピア」 

                東京 お台場 パナソニックセンター



数学・化学・物理の原理・法則などをヒトの五感を通して学べる施設です。自然の中にある不思議さ・おもしろさ・美しさをみんなで体験してきました。学院に着いてからは、夕食休憩をはさんで元素クイズと生物のDNAを作っている元素のひとつ”リン”(P)の産出量・埋蔵量・輸入先などを学習し、これからの世界人口増加に伴うリン不足の対応策としてその安定的確保についての考察を各自プレゼンしてもらいました。後日アップします。


   
   


リスーピアHP







                2014年 4月13日(日)

       
特別実習 深海コア〜地球の謎に迫る

    
主催: 日本地球惑星科学連合(JpGU)

    協力:  JAMSTEC  地学オリンピック日本委員会 
          慶應義塾高校  聖光学院中・高校

    場所:  慶應義塾高校



今回の特別実習は、日本地球惑星科学連合が横浜市内の中・高生を対象に、次世代を
担う研究者輩出を目的とするものです。この特別実習では、実際の深海調査で得られたデータや
深海コアの観察を通して、深海と地球に関する最先端の研究に触れ、地球内部構造の謎やプレートテクトニクスについて学びます。

今回の実習は、
JAMSTECのデータベース検索を利用して行うもので、全国初の試みになります。


                     
実習内容


 
@ データベースを利用して深海を探索
 A 深海コアを観察
 B 海を通じて地球の姿を知る





   


下の写真は、海洋調査船”かいよう”(上の絵の右端の船です)が水深1341mの相模湾海底で採取してきた堆積物の顕微鏡写真です。(フロンティアクラスN君提供)

※ かいよう 長さ61.6m 総トン数 3385トン 乗員数 60名 
           付設の曳航式深海海底システム「ディープ・トウ」 
           最大潜航深度 4000〜6000m 長さ3.5m 空中重量 1トン



            


 海綿と放散虫

わたしたちヒトを始めとして海洋に生息する貝やサンゴなど、さまざまな生物が固い骨格を持っています。骨格の多くはカルシウムで出来ていますが、中には二酸化ケイ素というガラスと似たような成分で骨格を作っている生物がいます。


中央下のやや透き通った棒状のものがありますが、これは
海綿の骨格です。見えているのは二酸化ケイ素の骨格です。また、中央左端には、やや透き通った球状のものがありますが、これは放散虫(ほうさんちゅう)の骨格です。放散虫もガラスの骨格を持っている生物です。

                              
非常に小さな単細胞生物で海の中に生息する
動物プランクトンです。骨格の大きさは1oの10分の1程度です。地質歴史学によると、生命が大発生したカンブリア紀(約5億年前)の地層に出現し、その後時代を経るたびに形を変えてきたことが知られています。

放散虫の化石は世界中で見つかっていますが、さまざまな種が出現をしては絶滅を繰り返しています。時代別による地層から産出する放散虫の化石を調べることでその地層が堆積した環境を知ることが出来ます。



 有孔虫

中央上やや左に、
丸みを帯びた五角形の白いものが見えますが、これは有孔虫(ゆうこうちゅう)の殻です。有孔虫は、世界の海に生息している原生動物で大きくても数ミリ程度です。顕微鏡を使って詳しく観察することができます。


有孔虫は、海洋表面から数百メートルの水深に浮遊している
「浮遊性有孔虫」と海底の表面や海底の泥の中に数pほどもぐって生息している「底生(ていせい)有孔虫」の2種類あります。有孔虫は海底に住む生物量の5割を占めると言われています。また、有孔虫もカンブリア紀に出現したといわれています。

          
有孔虫の殻は、↑のように
炭酸カルシウムからできているタマゴのような球がつながった部屋(チェンバーとよんでいます)からなり、内側には1つの細胞が入っています。チェンバーの表面を高倍率の顕微鏡で詳しく観察すると、細胞が出入りするための小さな孔(あな)がたくさんあいていることがわかります。これが有孔虫(孔がたくさん有る虫)という名前の由来です。

この孔からは
仮足(かそく)というクモの糸のような粘り気を持った柔軟性のある棒状の細胞質を伸ばすことができます。そしてプランクトンや海中の有機物などを食べて生活しています。

有孔虫の寿命は数週間から数ヶ月程度ですが、その間に生殖活動を行います。有孔虫が生命活動を終えたあと、内側の細胞はすぐに分解されますが、殻は壊れにくいため、海底に沈み、堆積物の中に
化石として保存されます。


有孔虫の
炭酸カルシウムの殻には生息していた時代の海の環境情報が残されています。
そのため、海底堆積物中に含まれる有孔虫の化
石の形態や殻の化学成分の分析を行うことによって、放散虫のように、海洋だけでなく過去の地球の環境を推測するための重要な手がかりになります。


ところで現在の地球環境において、二酸化炭素は徐々に濃度を増しています。新たな環境は有孔虫にどのような影響を与えるでしょうか?このまま続くと、海洋の酸性化が進み、有孔虫だけでなく、貝やサンゴたちも殻を作ることが出来なくなるかもしれません。


地球はこれまで、さまざまな
環境変動を繰り返し現在に至ります。地球の歴史の中ではこれまで何回かの大きな火山の噴火があり、そのたびに大気中のCO濃度が上昇する事態に見まわれてきました。
                   

そして海にとけ込むCOが増え、海は
酸性化し、生態系は大きな打撃を受けることになります。しかし大量の有孔虫が生息していたおかげで海の酸性化は緩和されてきました。有孔虫の炭酸カルシウムの殻がCOと反応して中和してくれたのです。


このようなはたらきをもつ有孔虫がこの長い歴史の中でどのようにして生き延びてきたのか、研究する価値は十分にありそうです。そしてその中にはわたしたち人間がどのように地球環境を持続していかなければならないかについての答えがかくされているかもしれません.


天体物理学では、遠くの宇宙を観測することによって、過去の宇宙の姿を知り、これからの宇宙を推測しています。同じように海底に眠っているさまざまな海洋化石を研究することによって過去の地球環境を知ることは、未来を知る手がかりにつながり、それは、地球生命が存続するためには必要なことかもしれませんね。


                     








 2014年 3月21日(祝・金)



アジア各国及び日本全国から未来の科学者が集まって開催された「つくばサイエンスエッジ」で塾生の鈴木漱星(そうせい)君が見事、英語ポスターセッションの部で準優勝しました。

今年、
横浜サイエンスフロンティア高校を卒業し、横浜市大への進学が決まっていますが、幸先のよいスタートとなりました。(昨年の12月27日にBSフジで放映された「ノーベル賞と最強の日本人」という番組内でスーパー高校生として紹介されました)

   
 鈴木漱星君  準優勝、おめでとうございます!
つくば サイエンスアイデアコンテスト







 第57回日本学生科学賞県作品展 優秀作品
 県科学教育振興委員会賞・受賞 [科学の部]


 「火災から人を守るのに適した木は何か?」

フロンティアクラス 横浜国立大学附属横浜中 M・T さん



  (1)研究の動機

小学生の時、社会科見学でお寺に行ったとき「木には防火能力があるためたくさん植えられている」
と聞いたことを思い出し、どんな木に防火能力があるのか、木の種類ごとの違いを調べて見ようと
考えた。


 
(2)研究の目的

火災から人を守るのに適した木を見つけ、防火林や防災公園、また家の周りに防火目的で植える
のに適した木を明らかにする。


 
(3)観察・実験の方法

枝(生木)を砂に刺し、チャッカマンで火をつける。この動作中における着火までの時間、燃焼の様子
煙の量、燃焼している時間を計測、観察する。


@ 観察実験期間

平成25年8月  実験に適した気候条件の20日間、実験開始時刻は午前5時から


A 実験条件

 気温 25℃〜30℃  湿度 65〜70%  風速1m/秒以下 (計測機器は借用)


B 実験材料

横浜市鶴見区総持寺さんのご協力で、敷地内に植生してある5種類の木を切らせていただいた。
実験に使用した木は、
「スギ」 「サクラ」 「クスノキ」 「アカマツ」 「イチョウ」である。


C 実験手順

1.下に濡れ雑巾を敷き、その上に砂を入れた金属製容器をおき、その上に3cmに切った枝を立
てる。

2.チャッカマンの火力を最大限にして、60秒間を限度として枝に火をあてる。

3.火がついたら、ストップウォッチで火がつくまでの時間、及び燃えている時間を計測する。同時に
出現する煙の量を目視する。(5段階で表した。最大が5、最少が1))

4.燃えかすを観察する。


D 実験結果

下記の記録は、それぞれの木について、同様の実験を15回ずつ行い、数字はその平均値である。

 木の種類  着火までの時間  燃焼時間  煙の量
 スギ  8.5秒  31.9秒  2
 サクラ  14秒  65秒  5
 クスノキ  8.2秒  38.3秒  4
 アカマツ  2.2秒  3.1秒  1
 イチョウ  着火しない  ー  3


                 
    
スギ      サクラ      クスノキ     アカマツ    イチョウ




 
(4) 考察


1.結果として、この5種類の中では
イチョウが最も燃えにくい木であることがわかった。枝を切るとき
にイチョウの木が、最も切りにくかった。木を切るときの感触で、これは
水分を多く含んでいるのでは
ないかと考えた。

それで3日間、イチョウの枝を天日で干し、乾燥させ、そのあと火をつけたら、20秒で火がついた。
イチョウが燃えにくいのは、中に水分を多く含んでいるからだと推察出来る。

2.アカマツはすぐ着火し燃焼時間も短かった。逆にサクラは着火までの時間が長く、燃焼時間も長
かった。

3.調べたらスギ・アカマツには
油分が多く含まれていることが分かった。着火までの時間が比較的
短いのは油分が関係しているのかもしれない。

4.サクラ・クスノキは落葉広葉樹、イチョウは落葉針葉樹である。今回の実験だけでは断定できない
が、針葉樹の方が燃えにくいのかもしれない。今後、他の木での実験をしてみようと思う。

5.今回は煙の量を目視でしたが、発生する煙の量を計測する機器があれば使用したい。









 学院生 S・H君  2013年 創造の育成塾参加


2013年7月30日〜8月6日にわたって、科学オリンピックを目指す「創造性の育成塾」が今年も開催されました。競争率10倍前後の難関を乗り越えた中学2年生の精鋭44名が全国から集まって山梨県富士吉田市にある研修所で科学合宿をして本日、各自自宅へと戻りました。

今回の講師は
鈴木章先生(ノーベル科学賞受賞・北大名誉教授)を初めとして、東京理科大学学長・横浜サイエンスフロンティア高校スーパーアドバイザーの藤嶋昭先生、数学者の秋山仁先生など多彩な顔ぶれです。

講義や実験の模様は録画でみることができます。
興味ある方はご覧になってはいかがでしょうか。今年、学院からはS・H君が参加しました。


                   
                 脳科学の授業で質問するS・H君
              CLICK


   

「物質の溶解性」 担当は江戸川学園 
取手中・高校教諭
 兼 龍盛 先生

水の電気分解 担当は開成中学高校
教諭 NHK高校講座「化学基礎」講師
宮本 一弘 先生
   
 宿泊している部屋からの富士山  富士山自然観察 高山植物
   
 溶岩石  夕食 おいしそうですね!

                                                写真は、SH君提供






        Yokohama Blue Carbon

2013年1月23日 第1回 国際ブルーカーボン・シンポジウムから 

               横浜の海から脱温暖化  




   
 会場は、横浜市開港記念会館  1917年(大正6年)に完成しました。
   
海洋生物資源の積極的な活用・海産物
の地産地消により、CO2を削減します。
パネルディスカッション・コーディネーター
は刑部(おさかべ)国立東京海洋大教授




 
横浜ブルーカーボン事業は、海洋生物によるCO2固定能力を向上させ
脱温暖化事業を推進する
「ブルーカーボン」と、海藻や貝類の食用利用
及び海洋バイオマスのエネルギー化などを推進する
「ブルーリソース」
により構成します。







 ブルーカーボンをもう少し詳しく説明します。


ブルーは青、すなわち海のことです。そしてカーボンは炭素という意味ですが、ここでは温暖化問題の原因となっているCO(二酸化炭素)のことを示しています。よってブルーカーボンは「海のCO」となりますが、これは海にあるCOの量という意味ではなく、海洋に生息する生き物によって吸収・捕捉されるCO(炭素)のことをいいます。

2009年の国連環境計画(UNEP)の報告で、次のようなことが明らかになりました。地球規模で考えた場合、実は森林などによるCO吸収量よりも、植物プランクトンや海草・海藻などの海洋生物によるCO2の吸収量の方がはるかに多いというのです。

数字で表すと、全世界から1年間に排出されるCOを炭素量として換算すると約
72億トンになり、そのうち、森林など陸上で吸収されるCO9億トンなのに対し、海洋全体で吸収される量は22億トンとなります。実に2.5倍近い量が陸よりも海で吸収されていたのです。



                         
             
     グリーンカーボン 9億トン        大気中へ41億トン
                         

                  
CO2  72億トン
                        ブルーカーボン 海へ22億トン
                                  
                                      



そのうち、2〜4億トンが、沿岸の浅場で吸収されているとしており、日本の海岸線は約35000kmと
世界第6位の長さを誇っており、世界的にも主要なブルーカーボン貯蔵国である可能性が高いことから、ブルーカーボンは温暖化防止策の新たな手段として高い注目を集めています。

皆さんは、中学校1年の時に、地球上の陸と海の割合は約3:7と学習されたと思いますが、そのように面積で比較すると海の方が陸よりもはるかに広いのです。それを考えて見ると、なるほど確かに海のCO2の吸収量が多いことも納得できると思います。

そしてこの時、UNEPの発表につけられたタイトルが「The Blue Carbon」だったのです。以前から言われている森林など陸上におけるCO2の吸収をグリーンカーボンと呼ぶのに対し、海洋生物によるCOの吸収を指すのがブルーカーボンと呼ぶようになりました。

CO2の吸収に寄与する海洋植物は
海草・海藻、植物プランクトン、マングローブ林など多伎にわたり、これらのCO吸収速度は熱帯林と同等、もしくはそれを上回るとされています。

吸収された炭素の一部が堆積物として海底に固定されることから、海洋におけるCOの高い固定量が注目されています。

この報告を受けて、温暖化対策の面でも健全な海洋の保全や回復は改めて重要だということが分かり、世界各地でさまざまな対策や実証実験などが行われることになりました。海のCO吸収量が多いといっても、海の汚染度差があります。プランクトンや海草・海藻が生きていけないような海では、COの吸収はあまり期待できないからです。


       
          気象庁HPより   炭素循環の模式図(1990年代)

二酸化炭素は、温室効果ガスの中でも大気中に最も多く存在し、地球温暖化への影響が最も大きいとされています。その二酸化炭素は、大気中だけでなく、炭素の種々の形態で海洋、陸上生物圏にも分布し、また形態を変えながらそれぞれの間を移動します。大気、海洋、陸上生物圏は炭素の貯蔵庫となっており、炭素がこれらの貯蔵庫間を交換・移動することにより形成される循環を「炭素循環」と呼んでいます。

図は、IPCC(2007年)をもとに作成したものです。各数値は炭素重量に換算したもので、貯蔵量(箱の中の数値、単位:億トン)あるいは交換量(矢印に添えられた数値、単位:億トン/年)を表している。黒の数値は、産業革命前の自然の循環の状態を表しており、収支はゼロです。の数値は、化石燃料の燃焼などの人間活動の影響によって、自然の状態から変化した量を表しています。


 海のどこでCO2は吸収されているのか?

海洋におけるCO2吸収の主役は、外洋域の表層の生息している植物プランクトンが担っているといわれています。しかし沿岸域では植物プランクトンの他に海藻海草といった大型の植物が生息していますので、沿岸域でも大量のCO2が吸収されています。

そこで横浜ブルーカーボン事業では、藻場の保全・再生や、海洋生物によるCO2吸収などにより、海洋での
CO2固定能力を向上させ、脱温暖化を推進していく事業に取り組んでいます。

            
横浜・八景島シーパラダイスのセントラルベイに設置された実験施設です。貝類や藻類などの
付着状況を観察するとともに、炭素・窒素・リンの取り込み状況や水質や水底の変化状況を調査しています。


            
わかめの値付け・収穫を体験するイベントの様子です。12月には数センチメートルであったわかめが約3ヶ月後には、人の身長ほどに成長するまでの様子を期間を通して実感します。ブルーカーボンを実体験による環境教育によって啓発していく事業です。






 海のエネルギー利用




現在、海水を利用した自然エネルギーに注目が集まっています。波力発電潮流発電
海水の持つ熱を利用する
海洋温度差発電などの温度差熱利用技術も発達しています。
現実的な例の1つとして、ヒートポンプを用いて温水や冷水を生み出すシステムがありま
す。

従来の電気や化石燃料を用いた熱源に比べてエネルギー消費が削減され、CO2抑制
効果も得られます。


         
              日本熱供給事業協会HPより

海水の持つ熱を未利用エネルギーとして活用するシステムです。ヒートポンプ・蒸気ボイ
ラーなどを使用して、冷水・温水および蒸気をつくりだします。